大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)9110号 判決
【主文】
一 被告らは、その販売する「洋服ブラシ」又はその容器、包装用台紙に、「エチケット」という標章を附してはならない。
二 被告らは、その発行するカタログの広告記事その他の広告に、右「洋服ブラシ」の広告として「エチケット」という標章を附してこれを展示し、又は頒布してはならない。
三 被告株式会社真山商事は原告に対し、金七五万円及びこれに対する昭和五九年一月五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告ツバキ株式会社は原告に対し、金五万七二二八円及びこれに対する昭和五八年一二月三〇日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用は、原告と被告株式会社真山商事との間に生じた分は五分し、その四を原告の負担、その余は同被告の負担とし、原告と被告ツバキ株式会社との間に生じた分は一〇分し、その九を原告の負担、その余は同被告の負担とする。
七 この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
【事実】
「二 原告の請求原因
1 原告は、昭和三九年九月頃日本ゼオラ株式会社から次の(一)の商標権(以下「本件商標権(一)」といい、その登録商標を「本件商標(一)」という。)を買受け、同年一二月四日商標権移転の登録をし、又右商標権の連合商標として次の(二)の商標権(以下「本件商標権(二)」といい、その登録商標を「本件商標(二)」という。)を有する。
(一) 登録番号 第五五九一二〇号
出願日 昭和三四年四月一三日
公告日 昭和三五年五月一〇日
登録日 同年一〇月二七日
更新登録日 昭和五六年一月二九日
指定商品 旧第六四類頭飾品、調髪具及び「リボン」の類、造花並に刷子類
登録商標 別紙第一商標公報(一)記載のとおり
(二) 登録番号 第一五〇一三五七号
出願日 昭和五二年一〇月二六日
公告日 昭和五六年四月九日
登録日 昭和五七年二月二六日
指定商品 第一九類洋服ブラシ、洗たくブラシ
登録商標 別紙第一商標公報(二)記載のとおり
2 原告は昭和三九年一二月以来、原告が開発した傾斜パイル洋服ブラシを始めその他のブラシ類に「エチケット」標章を表示して、全国の著名な百貨店、スーパー、問屋及び多数の小売店において大々的に販売するとともに、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスコミ広告媒体に多額の費用を投じて積極的に宣伝に務めてきた結果、「エチケット」標章は原告商品(ブラシ類)であるとの出所表示機能を獲得するに至り、「エチケット」標章は昭和五七年一〇月末頃においても、なお原告商品(ブラシ類)たることを示す標章として周知著名となつている。
3 しかるところ、被告らは、「エチケット」標章が商品「ブラシ」類について周知著名であることを知りながら、昭和五七年一二月以降洋服ブラシとヘアーブラシとを別紙第二の写真に表示する態様で一体として商品(検乙第一号証。以下「イ号商品」という。)を製造販売し、その包装用台紙(以下「イ号台紙」という。)に、「ケースはエチケット洋服ブラシです」「エチケット洋服ブラシケース付折りたたみヘアーブラシ」と表示して、「エチケット」なる標章を使用し、又、右商品に関するカタログなどにも「エチケット」という標章を附して展示し又は頒布する行為を敢えて行い、本件商標権(一)(二)を故意又は過失により侵害している。
又、被告らの右行為は、原告が多年にわたり多大の労力と費用をかけて取得した「エチケット」標章の周知著名性に便乗して、不法の利得を獲得し続けている極めて悪質な行為であり、これを放置しておくことは消費者にイ号商品と原告商品との混同誤認を生じさせるものであつて、これにより原告は営業上の利益を害されるおそれがある。
4 被告らは、故意又は過失によりイ号商品を製造販売して次の(一)(二)の利益を得ているところ、右各利益額はいずれも原告が受けた損害額と推定されるので(商標法三八条一項)、原告に対し右利益相当額の損害を賠償すべき義務がある。
(一) 真山商事は、昭和五七年一二月から昭和五九年五月までの間に、イ号商品を一個八〇〇円の販売価格で一〇万個販売して、一個当たり少くとも一四〇円、合計一四〇〇万円の利益を得た。
(二) ツバキは、昭和五七年一二月から昭和五八年一二月までの間に、イ号商品を一個八〇〇円の販売価格で九万五〇〇〇個販売して、一個当たり少なくとも一四〇円、合計一三三〇万円の利益を得た。
5 よつて、原告は被告らに対し、主位的に本件商標権(一)(二)に基づき、予備的に不正競争防止法一条一項一号、一条ノ二第一項に基づき、次の各裁判を求める。
(一) 「ヘアーブラシ」「洋服ブラシ」又はその包装用台紙、カタログ等への「エチケット」標章の使用差止。
(二) 損害賠償金(真山商事は一四〇〇万円、ツバキは一三三〇万円)及びこれに対する訴状送達の翌日(真山商事は昭和五九年一月五日、ツバキは昭和五八年一二月三〇日)から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払。」
【理由】
一<証拠>によれば請求原因1項の事実が認められ、<証拠>によれば、真山商事は昭和五七年一二月からイ号商品を製造して株式会社井田に販売し、同会社はイ号商品の一部をツバキに販売し、ツバキは昭和五八年中にイ号商品を全国各地の装粧問屋へ販売したことが認められる。
二本件商標権(一)(二)の侵害について
1 イ号商品自体が本件商標権(一)(二)を侵害するか否かについて
<証拠>によれば、イ号商品はヘアーブラシとへアーブラシを入れるケースが一体となつた商品であり、その正面から見た姿は別紙第二の写真のとおりであつて、別紙第三のイ号台紙上の左右にヘアーブラシとヘアーブラシ用ケースを並べてセットとし、同ケースの下方三分の一ないし半分にかけて若い女性がヘアーブラシを使用している写真をのせ、その上から一体的に硬質塩化ビニール製の透明カバーで覆われたものであること、イ号台紙には、その表側上部にヘアーブラシの商標であるタッチアップブラシの表示がカタカナと英語で大きく記載され、その下に小さな文字で「エチケット洋服ブラシケース付」「折りたたみヘアーブラシ」の文言が記載され、その裏側には、タッチアップブラシの特色、品質表示、使用方法等とともに、「ケースはエチケット洋服ブラシです」の文言が記載されていること、イ号商品のうちヘアーブラシは真山商事が発明奨励賞を受賞した実用新案権の実施品であり、スライダーを手前へ移動させて合成樹脂製のブラシを立ち上がらせて使用する折りたたみ式のもので使用時以外はブラシが倒れ、厚さがわずかに一二ミリメートルにすぎないため、これをヘアーブラシ用ケースに入れて持ち運びができるようになつていること、右ヘアーブラシ用ケースはその一面が傾斜パイルが装着された除塵用の洋服ブラシ(後記既に消滅している原告の実用新案権の実施品)になつているため、同ケースを洋服ブラシとしても使用できること、ツバキは、自社の昭和五八年度版のカタログにイ号商品をタッチアップブラシの商標を付して掲げ、その説明文中に小さな字でイ号商品の特色として、「ケースがエチケット刷子になつているよ」の文言を記載したことが認められる。
右事実によれば、イ号商品は、イ号台紙の表面にヘアーブラシの商標であるタッチアップブラシが大きく表示され、若い女性がヘアーブラシを使用している写真が印象的であり、イ号台紙の裏側にもタッチアップブラシの特色、品質表示、使用方法等についての説明文が記載されていることからして、イ号商品はヘアーブラシが本体であり、ヘアーブラシ用ケースの一面が洋服ブラシとなつていて、同ケースを洋服ブラシとしても使用できるにすぎないのであるから、洋服ブラシはイ号商品の本体であるヘアーブラシの付属品にすぎない。このことは、イ号商品の小売価格八〇〇円の内訳は、ヘアーブラシが六〇〇円でヘアーブラシ用ケースが二〇〇円であり(後記四参照)、ヘアーブラシが主たる価値を占めていることからも裏付けられる。もつとも、イ号台紙には、「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシケースです」の文言が記載され、又、ツバキのカタログにも、「ケースがエチケット刷子になつているよ」の文言が記載されているが、これはタッチアップブラシなる商標で表示されたヘアーブラシにはヘアーブラシ用ケースがついていて、同ケースを洋服ブラシとしても使用できることを消費者にアピールしたいためである。
そうだとすると、「エチケット」なる文言はイ号商品の単なる付属品にすぎない洋服ブラシに使用されているにすぎず、イ号商品の主体であるへアーブラシについてはタッチアップブラシという商標が使用されていて、「エチケット」標章は使用されていないのであるから、イ号商品自体が本件商標権(一)(二)を侵害するものとは認められない。
2 イ号商品中の洋服ブラシ付へアーブラシケースが本件商標権(一)(二)を侵害するか否かについて
<証拠>によれば、原告は傾斜パイルが装着された除塵用の洋服ブラシ(繊維、糸、毛等よりなる比較的短かい立毛を適宜形状の台体の台面上に緻密に配置すると共に、立毛の毛足を一定の方向に伏倒させてなる除塵用ブラシ)について、昭和三四年六月二六日実用新案出願し(実願昭三七―五六〇五九―前特許出願日援用)、昭和三八年一〇月一四日出願公告され(実公昭三八―二一三二四)、昭和三九年四月二一日登録第五八七六〇七号として実用新案権を取得し、一〇年間日本国内で独占的に販売したこと、原告は、本件商標権(一)の権利者となつた昭和三九年以後も、傾斜パイル洋服ブラシに「エチケット」の標章を表示して全国の著名な百貨店、スーパー、問屋及び多数の小売店において大々的に販売するとともに、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスコミ広告媒体に多額の費用を投じて積極的に宣伝に努めてきた結果、実用新案権が消滅した後も、取引業者、一般消費者の間で、「エチケット」の標章が表示された傾斜パイル洋服ブラシは原告の商品であるとの出所表示機能を獲得するに至り、真山商事がイ号商品の製造販売を開始した昭和五七年一二月当時も、「エチケット」の標章は原告の傾斜パイル洋服ブラシの商品表示として周知著名となつていたことが認められる。
右事実によれば、取引業者、一般消費者の間では、「エチケット」の標章が表示された傾斜パイル洋服ブラシは原告商品であるとの出所表示機能を獲得しており、「エチケット」標章は原告の傾斜パイル洋服ブラシの商品表示として周知著名となつていたのであるから、被告らが、イ号台紙に「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシです」と記載したり、カタログに「ケースがエチケット刷子になつているよ」と記載すれば、取引業者、一般消費者は、イ号商品中の洋服ブラシ付へアーブラシケースを原告商品である「エチケット洋服ブラシ」と誤認混同するおそれがあり、イ号台紙やカタログの「エチケット」の文言は自他商品の識別機能を果たす商標として使用されているものというべく、被告らは、「エチケット」標章を本件商標(一)(二)の指定商品と同一商品である「洋服ブラシ」に使用し、少なくとも過失により本件商標権(一)(二)を侵害したことが認められる。
被告らは、本件商標(一)はエチケットという太字の図形的文字であり、被告らが通常の活字でエチケットなる文言を使用しても本件商標権(一)の侵害にはならないと主張するが、本件商標(一)と被告らが使用した標章「エチケット」とは称呼、観念が全く同一であり、通常の活字で「エチケット」の文言を使用しても本件商標権(一)の侵害となることは明らかである。又、被告らは、エチケットとは礼儀作法を意味する英仏共通語で、礼儀作法にそつた身だしなみのためのブラシという意味で「エチケット」文言を使用したにすぎず、本件商標権(一)(二)の侵害にはならないと主張する。しかし、被告らは、エチケット洋服ブラシが傾斜パイル洋服ブラシの商品表示として周知著名となつていたからこそ、「エチケット洋服ブラシ」「エチケット刷子」という文言を使用したのであり、礼儀作法にそつた身だしなみのためのブラシという意味で「エチケット」文言を使用したものとは到底認められない。更に、被告らは、「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシです」「ケースがエチケット刷子になつているのよ」の記載はイ号商品についての単なる説明文であり、形状、使用の方法を普通に用いられる方法で使用したにすぎず、商標法二六条一項二号により本件商標(一)(二)の効力はこれに及ばないとか、本来の商標的使用には当たらないと主張する。しかし、被告らが主張するように単なる説明文であるならば、「洋服ブラシケース付」「ケースは洋服ブラシです」「ケースが洋服刷子になつているよ」と記載すればよく、原告の傾斜パイル洋服ブラシの周知著名標章である「エチケット」を使用する必要性など全くなく、単なる説明文にすぎないとの主張は失当であり、被告らがイ号商品中の傾斜パイル洋服ブラシについて「エチケット洋服ブラシ」「エチケット刷子」という文言を使用すれば原告商品との誤認混同を生じるおそれがあり、右「エチケット」文言は自他商品の識別機能を果たす商標として使用されているものであつて、商標法二六条一項二号の適用の余地はない。
三本件商標権(一)(二)に基づく差止請求について
真山商事は、イ号台紙に「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシです」と記載して洋服ブラシ付へアーブラシケースを製造販売し、又、ツバキは、カタログに「ケースがエチケット刷子になつているよ」と記載して右ケースを販売し、本件商標権(一)(二)の侵害行為をしたのであるから、本件商標権(一)(二)に基づく「エチケット」標章の差止請求中「洋服ブラシ」に関する部分は理由がある。しかし被告らが製造販売したイ号物件の「ヘアーブラシ」には「エチケット」の標章が使用されていないから、右差止請求中「ヘアーブラシ」に関する部分は失当である。
もつとも、被告らは、既に「エチケット」なる文言をイ号台紙、カタログの商品説明から削除しているので、差止請求の対象物が消滅していると主張する。しかし、被告らが現時点ではイ号台紙やカタログの商品説明から「エチケット」の標章を削除しているとしても、被告らは、イ号台紙やカタログに「エチケット」の文言を記載しても本件商標権(一)(二)の侵害にはならないと主張して、商標権侵害の事実を争つていることからして、将来再びイ号台紙やカタログ等に「エチケット」標章を使用して本件商標権(一)(二)の侵害行為をするおそれがあり、予防請求として差止請求が認められる。
四本件商標権(一)(二)に基づく損害賠償請求について
<証拠>によれば、真山商事は、昭和五七年一二月からイ号商品を販売し、昭和五八年暮頃からはイ号商品と共に検乙第二号証の商品(ヘアーブラシと洋服ブラシ付ヘアーブラシケースとが一体となつたもの。但し包装用台紙にエチケットの文言が記載されていない。)も販売するようになつたこと、真山商事は、昭和五七年一二月から昭和五九年五月までの間にイ号商品を一個当たり二八〇円の単価で三万個販売し、一個当たりの荒利益一〇〇円に三万個を乗じた三〇〇万円の荒利益を得たことが認められる。<反証判断略>
<証拠>によれば、ツバキは昭和五八年中に株式会社井田からイ号商品を三〇一二個仕入れ、これを全国各地の装粧品問屋へ一個当たり三八〇円総額一一四万四五六〇円の価額で販売し、その二〇パーセントにあたる二二万八九一二円の荒利益を得たことが認められる。<反証判断略>
<証拠>によれば、イ号商品の小売価格は一個当たり八〇〇円であるが、そのうちヘアーブラシが六〇〇円(四分の三)、洋服ブラシ付ヘアーブラシケースが二〇〇円(四分の一)の価値を占めることが認められる。そうすると、前認定のように、イ号商品中に洋服ブラシ付ヘアーブラシケースがあることによつて、ヘアーブラシを主体とするイ号商品がはじめて商品価値を獲得し、これなくしては売れないというものではないと認められるから、被告らが前認定の商標権侵害行為によつて得た利益は、真山商事においては、前記イ号商品製造販売による荒利益三〇〇万円の四分の一に当たる七五万円、ツバキにおいては、前記イ号商品販売による荒利益二二万八九一二円の四分の一に当たる五万七二二八円と認めるのが相当である。
もつとも、商標法三八条一項の適用にあたつては、証拠上被告の純利益を把握しえたときはこれによるべきものであるが、その場合原告側が荒利益額について一応の立証を遂げていれば、純利益額を算出するためのこれを減額する要素は、被告側にその主張・立証責任を負わせるのが相当であると解する。蓋し、原告側には、被告が得た利益を立証するためには文書提出命令の申立(商標法三九条、特許法一〇五条)をすることができるが、これにより立証できるのは、侵害品の製造・販売数量、販売価格、製造・仕入原価など荒利益額を把握できる資料に止まることが多く、そうした場合、被告の得た利益額の立証責任が原告にあるからといつて、さらに原告側に被告の利益となる純利益額算出のための減額要素の挙証義務を負わせ、その資料の提出がないからといつて、損害額についての立証がないとしたのでは、かえつて商標権侵害訴訟における原告の損害額の立証の困難性を緩和するために特に設けられた右推定規定の活用が著しく困難となり、右推定規定が設けられた立法趣旨にも反する結果となるからである。従つて、本件においても、被告らにおいて、純利益額算出のための前記荒利益額を減額し得る要素について何ら主張・立証しないので、商標法三八条一項により被告らの前記荒利益額をもつて原告の損害額と認めるのが相当である。
五不正競争防止法に基づく請求について
原告は、イ号台紙に「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシです」と記載されていることから、ヘアーブラシと洋服ブラシとが一体となつたイ号商品自体について原告商品との誤認混同を生じるおそれがあると主張し、予備的に不正競争防止法に基づき、「ヘアーブラシ」又はその包装用台紙、カタログ等に「エチケット」の標章を附すことの差止めを求め、又、イ号商品自体の製造販売による被告らの利益相当額についての損害賠償を求めている。
しかし、被告らは、イ号商品中の「ヘアーブラシ」に「エチケット」の標章を使用していないのであるから(前記二の1参照)、不正競争防止法に基づいても、「ヘアーブラシ」に関して「エチケット」標章の使用差止を求めることはできない。
イ号商品は、イ号台紙の表側にヘアーブラシの商標であるタッチアップブラシの表示がカタカナ及び英語で大きく記載され、若い女性がヘアーブラシを使用している写真が印象的であり、イ号台紙の裏側にも「タッチアップブラシ」「タッチアップブラシ本舗」と大きな太い字で記載され、タッチアップブラシの特色、品質表示、使用方法についての説明文が記載されていて、「エチケット洋服ブラシケース付」「ケースはエチケット洋服ブラシです」の文字は小さく目立たないこと、イ号商品はヘアーブラシ(タッチアップブラシ)が本体であり、ヘアーブラシ用ケースの一面が洋服ブラシ(エチケット洋服ブラシ)となつていて、同ケースを洋服ブラシとしても使用できるにすぎないのであるから、イ号商品の外観や形態、説明文から判断して、一般の消費者は、ヘアーブラシに着目してイ号商品を購入する者がほとんどであり、洋服ブラシに着目してイ号商品を購入する者は非常に少ないと思われること、原告はイ号商品のヘアーブラシのようなブラシが立ち上つたり倒れたりする折りたたみ式のヘアーブラシを製造販売していないこと、以上の諸点に照らせば、イ号台紙やカタログに「エチケット」文言が使用されていても、イ号商品自体が原告商品と誤認混同されるおそれがあるものとは認められない。
証人植田宗之(原告会社の社員)は、イ号商品を見た取引業者は、原告がタッチアップブラシ本舗へエチケット洋服ブラシを販売しているのだなという受け取り方をすると証言しており(同証人調書一九丁裏、二〇丁表)、右証言によるも、イ号商品中の洋服ブラシについては原告商品と誤認混同されるおそれがあつても、イ号商品自体について原告商品と誤認混同されるおそれがあるものとは認められない。
そうだとすると、イ号商品中の洋服ブラシの製造販売行為が不正競争行為となることがあつても、イ号商品自体の製造販売行為が不正競争行為となるとは認められず、不正競争防止法に基づく損害賠償請求についても、イ号商品中のヘアーブラシの製造販売による利益相当分に関する部分は失当である。そして、イ号商品中の洋服ブラシの製造販売行為が不正競争行為となるとしても、右洋服ブラシの製造販売により、原告が前記認定の七五万円、五万七二二八円を越える損害を蒙つたことは認められない。
六以上の認定・判断によれば、原告の本訴請求については、「洋服ブラシ」又はその包装用台紙、カタログ等への「エチケット」標章の使用差止、真山商事に対する損害賠償金七五万円及びこれに対する訴状送達の翌日(昭和五九年一月五日)から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払、ツバキに対する損害賠償金五万七二二八
円及びこれに対する訴状送達の翌日(昭和五八年一二月二〇日)から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないので棄却す<る。>
(潮 久郎 紙浦健二 徳永幸藏)